研究内容

農産品の特性理解や販路拡大を目指す小規模事業者の皆様との連携を目指し、『機能性解析プラットフォーム』構築を目指しています。


卒業研究・共同研究


農産品の機能性成分解析

①糖尿病の予防的な対策方法としてα-グルコシダーゼ活性を阻害し、糖の分解・吸収を遅らせることで、血糖上昇が緩やかになり、食後の急激な高血糖を抑えることが期待されます。

熊本県産の柑橘類の、甘夏、河内晩柑、不知火、晩白柚の4種類の内果皮抽出液を調整し、a-グルコシダーゼ阻害活性を測定した結果、4種の柑橘類内果皮抽出液に阻害活性が認められた。

 糖尿病予防に有効な加工品の開発や保健機能食品開発につながるよう、活性成分の同定が期待される。

 

②歯周病の原因菌(ジンジバリス菌)が菌体外に産生するプロテアーゼ(ジンジパイン)は、菌の増殖に必須であるとともに、歯茎からの出血や細胞傷害に関わる病原因子である。本研究グループでは、新規歯周病治療薬開発を目指して、植物性食品に含まれるジンジパイン阻害物質の網羅的な探索を行っている。本研究成果は、安全かつ安価な植物由来成分を、歯周病治療薬や保健機能食品へ応用するための重要な基礎知見となる。

 


 農産品に含まれる新規機能性成分の解析は、農産品販路拡大やブランド化促進の一助となるのみならず、将来的な医薬品・保健用食品開発への重要な基礎知見となりうる。本研究では、熊本県産の農産品を対象とし、かぼちゃのGABA含有量の測定を実施した。

 熊本市の生産者の方から供与いただいたかぼちゃ可食部を加熱し、ミキサー破砕後の水溶液に含まれるGABA量を酵素法により定量した。その結果、かぼちゃ100 g当たりに含まれるGABA量は55 mgであり、野菜類の中では非常に高濃度であった。GABAは血圧が高めの方に適したトクホ成分でもあり、かぼちゃはGABAの有効な供給源となりうると考えられる。

がん表面タンパク質の解析

補体系C5aは、自然免疫に加え組織炎症反応や免疫細胞の活性化などに関わることが見出されつつある免疫系タンパク質である。一部のがん細胞の表面にはC5a受容体が発現しており、がん細胞も増殖や組織浸潤等にC5aを利用していると考えられている。


ライム病病原菌と媒介マダニの解析

細長いらせん状の形態を持つスピロヘータは、梅毒、ライム病、レプトスピラ症等を引き起こすグラム陰性細菌の一グループである。ライム病は感染の経過とともに好中球やマクロファージの成熟、応答、組織侵潤を引き起こし、関節炎、心筋炎、末梢神経障害を発症させる。スピロヘータはダニが媒介し、通常の寄生対象は野鼠やシカであるが、偶発宿主としてヒト、家畜、愛玩動物などがある。欧米では現在でも年間数万人の患者が発生し、さらにその報告数も年々増加傾向にあることや、慢性化とともに炎症が難治化するなどの問題点も有る。

 

ライム病ボレリア菌Borrelia burgdorferiの抗原の1つであるBB0323は、ペリプラズム内膜上に局在し、外膜の構成や細胞分裂に関与すると推察されている。またBB0323は、ライム病ボレリア菌のマウス感染及び媒介ダニ感染に必須であることが示された唯一の抗原タンパク質である。部分的にBB0323遺伝子を欠損させた組み換えボレリア菌を作製し、その表現型解析を行った。その結果、BB0323のN末端部分がボレリア菌の正常な分裂に必須である一方、C末端に存在するペプチドグリカン結合モチーフがボレリア菌のマウス感染に必須であることが示された。また数種類のドメイン欠損組み換え型BB0323タンパク質を用いたFar-Western blottingや表面抗原のLC/MS/MS解析等より、BB0323が翻訳後ペリプラズムのプロテアーゼによる多段階のプロセシングを受け、成熟N末端ポリペプチド鎖とC末端ポリペプチド鎖がヘテロマーを形成することを明かにした。

 

さらにBB0323の生理機能に関する知見を得るため、BB0323をプローブとしたY2H、Pull-down assay、co-IP、LC/MS/MS解析等を行った。その結果同定したBB0238は、既知タンパク質との相同性を持たないユニークな分子で、ボレリア菌ペリプラズムに局在していた。BB0238欠損ボレリア菌はマウス感染能を失っており、さらにBB0323が翻訳後速やかに分解を受ける事が分かった。以上の結果から、BB0323ヘテロマーとBB0238はボレリア菌ペリプラズムにおいて外膜の構成やマウスへの感染に必須の未知の複合体を形成することが示唆された。

 

また媒介するダニの自然免疫分子を同定する為に、吸血後の腸より分離したペリトロフィックマトリックスを単離し、LC/MS/MS解析等により主要な抗原タンパク質を同定した。現在RNAiや抗体による機能阻害アッセイを行っており、主要なキチン結合ドメインを有する分子がボレリア菌抑制に関わっていることを明らかにしつつある。